知識は意識を変え、演奏表現を導く

~日々楽譜へ立ち向かう貴方へ、共に学びましょう~

今のままでは何かが足りないと考えたことはありませんか。
演奏表現学会は、そう考えた同世代の音楽家たち数人が出発点となって発足しました。
つまり、音楽について知らなくてはならないことが、まだまだ多いのです。
私たちは学会を通じて、演奏・作曲・音楽学の専門家がそれぞれの立場から、互いに討論し研究を進めています。これは欧米諸国では普通のことですが、我が国ではあまり見られない学会独自の方針と言えます。簡単に言えば、楽曲分析や歴史的背景を知った上で、演奏表現を深めていくという意識です。
演奏分野でピアノが中心となっているのは、発足時に会長に就任していただいた園田高弘先生の存在があるからです。
何より先生ご自身が、真に国際的で高度なご経験から、日本の若い世代に対して深い問いかけをなさっていたからです。
それが、年報の冒頭に先生が自ら執筆なさった「巻頭言」に提示されています。
これを受け、先生を精神的支柱とする数名が学会発起人となり、学会一同の総意として「趣意書」を掲げました。
私たち学会は、発足より20年を経ようとしています。
その間に時代は様々に変化し、世界はもとより日本の音楽界もめまぐるしく進展しています。
しかし私たちに潜在する問題は、何も変わってはいません。
音楽という芸術に対する真の理解と表現を考える時、まだまだ学ぶべきことが数多くあります。
私たちは、絶えず学び考えていかねばなりません。ひたすら楽譜や鍵盤に向かうだけでは、見えてこない部分があります。
たとえば、モーツァルトやベートーヴェンはもちろん、ショパンやリストでさえも、刻々と変化し発展していく楽器(ピアノ)を弾いて作曲していました。オーケストラの楽器も同様です。
また、バッハやショパンの舞曲では、実際の踊りのステップがどうだったかを知ると、演奏の表現が大きく変化します。
このような歴史的背景にも、私たちは改めて目を向ける必要があります。
私たちの学会は、演奏表現の現場を念頭に置くことにより、その意義をますます深めていこうとしています。
学会を通じて演奏の将来を考えることが、今こそ問われているのではないでしょうか。